渡英前(2004年以前)につくらせて頂いたコードバンウォレットのリペアを先月の誕生日一日前に行った。ツールは英国に置いてきているので、姫路のオヤジ・小田さんに借りに行き仲良く並んで作業をしてきた。
今回のリペアは外周の再ステッチが主な仕事であり、そのついでに留め具の緩み、ストラップ部の再ステッチ、部分の補強ステッチ、コバ(断面)の再磨きなどなど。
ハンドステッチは、ミシンと違って糸が縫い目ごとにクロスしているので部分的に擦れて切れたとしてもほつれが非常に拡がりにくい。なので、糸を解く作業も一目一目、表のコードバンに傷をつけないように慎重に行う必要がある。
部分的なチェックを済ませた後は、パーツの貼り合わせに入る。その前にも、縫い代部をならすためのペーパー掛けを怠らない。貼り合わせの際は針穴がずれないように、何本も針を使用して行っていく。そして縫いに入る前に、糸通りがスムーズに行くように、目打ちで一目一目こじっていく。
ステッチに入るとワックスをこまめに足しつつ、要所要所にほつれを更に補強する返し縫を入れながらリズミカルに。気が乱れると、糸のテンションが変わるから不思議なものだ。
そうこうして集中してくると、頭の中が真っ白になっていって
自分が道具の一部になっている気になる時がある。
それがまさに「没頭」というもので、そんな時間が好きで「もの」をつくっている気がする。
左から:ブライドルコードバン(1年半私物)、新品のワックス・コードバン、リペアをさせていただいた4年超えのSさんのウォレット。
2種のコードバンの仕上げによる光沢の違い。